今考え中だ

こじらせ中年って多いですよね。恋愛市場引退したいような、それでいて、私だってまだまだ的な。「まだまだ、ときめいていたいっ」っていう完璧リア充も多いけど、一方で、わたしなんて、いやー、もう、でも?みたいな人も多いと思うんです。つまらない日常からどうやって目をそらしてこう?というヒントが提示できたらという作品を書いていきたいと思っています。また、考えすぎて頭がバカとか変態になっていしまった方へ向けてのメッセージも込めてます。若い人にも読んでいいただきたい!死ぬからさぁ。

メロチュの死について

メロチュの死について

メロは最初にマンションに住みついた「にゃんさん」という母猫の直系の息子だ。にゃんさんはある程度子供たちが大きくなったころ、わらわらと子猫たちを家に連れてきた。ある子猫はレースのカーテンにぶら下がり、ある猫はクッションの上に頭を置きくつろいでいて、そう、その中にきっとメロもいたはずだ。

メロは昨年あたり、もしくは昨年のちょっと前の冬から、順ちゃんの自転車のかごに住みつくようになり、わたしたちはその自転車を「メロちゃん号」と名付けた。そしていつからか家に入ってくるようになり、(玄関からも窓からも)、そしてうちの玄関のドアが開かないと、それはそれは「にゃおーん、にゃおーん」と絶叫する始末で、近所の人にとても恥ずかしさを覚えざるをえなかった。

 そして今年の夏前、メロは食欲がないようだった。かろうじて水と牛乳を、ぴちゃぴちゃと舌を湿らす程度だった。メロは何らかの病気に罹っていた。

 そして夏の間、メロはやってこなかった。わたしたちは少しの寂しさを味わった。そう、少しであってそうたくさんではない寂しさだった。そしてメロが心配だった。

7月2日、メロはうちに久しぶりに現れた。けれどもう食べ物どころか、水も何も飲もうとせず、わたしは順ちゃんに「もうすぐ、死ぬよ」と言った。

 元気なころのメロっていうやつは、お腹が空いたらエサ用の皿をかたんかたん鳴らして餌を要求し、いつもソファの上に陣取って、わたしと一緒に寝てみたり、深夜3時間まで居座り、ソファを占拠していた。ウィッシュをやることもあって、わたしたちを楽しませてくれた。

 けれどメロは病気になった。

7月3にはメロは現れなかった。わたしは順ちゃんに「もう死んでるよ」と2回目の「死」という言葉を口にした。そして1日開けて7月4日、またメロは庭からやってきた。網戸にしていたから気が付いたようなものの、もうメロは多分声を出すのも億劫だったのだろうと思う。けれど順ちゃんが網戸をあけてやるとメロは部屋に入ってきて、なぜか部屋中をうろつきまわった。けれどその様は足がおぼつかなく、よろよろとしたもので、わたしがDYIして作ったベンチの下に入っていった。そして順ちゃんがお風呂に入った。わたしがメロを見守らなければならなかった。わたしはソファでうとうとしていたのかもしれない。なにか音がして意識が現実、苦しい現実に戻り、メロを見るとメロはさらに奥に身を置いていて、わたしはメロに声をかけ、「メロ、メロ、メロチュ」と呼んでみたが反応はなく、触ってみてもピクリとも動かない。わたしはかなり焦った。メロがもしかしたら死んでいるのかもしれないと思ったからだ。順ちゃんに早く風呂から出るよう頼み、汗を拭きながらパンツ一丁の順ちゃんは、メロを強引に抱き、網戸を開け、外に出した。それを見ていたわたしは、何回もメロが出たくないよーーーと踏ん張ったように見え、順ちゃんにそのことを伝えると、

「でもな、ものすごく力が弱かったんだ」

と言う。わたしは「今晩きっともたないよ」と3回目の「死」を発言した。

 

そしてわたしの誕生日9月5日であるが、その日がメロの命日となった。わたしたちはバスを乗り継ぎ釣堀に行こうという最中で、マンションの玄関を開け、誰も気が付かないような、植え込みの中にメロはいて、口をぽっかり空けていた。死んでいるのかもしれない、そう思った。けれど手を目一杯伸ばしてメロの頭のつむじを撫でると、 ぼんやりと目を半開きに開けた。

釣堀では初めは釣ろうとしていたが、徐々に身体がだるくなり、寒気もし、頭も重く、それからは順ちゃんの釣りをぼんやり見たり、喫煙所でエコーを吸ったりして過ごした。 

 うちまで帰ると、順ちゃんはすぐに整体に行ってしまった。わたしはメロを見に行った。さっき、釣堀に行くとき見たときより、メロは植え込みのさらに中に進んでいた。

 そして顔に蟻が群がっていた。

わたしは必死でありを追い払った。ああ、ポコちゃんに餌をあげる時間だ。部屋に戻りアルコールで殺菌しポコちゃんに餌をやる。そしてまた植え込みにはいつくばりメロの頭についている蟻をこすり落としこすり落としこすり落とし、けれどそんな姿を近所の子供たちが見れば、メロが見世物になる。そう思ってしばらく蟻を追い払い、そして部屋に戻る、それを繰り返した。そしてあちこちに電話して、やっと猫の死体の回収を行っている役所に電話をかけると、6時までだという。それではメロチュがかわいそうすぎる。わたしは「ではわたしがその死んだネコを玄関に保護しますので」。そこまで言うと、その役所の人間も、では業者を当たってみます。と言ってくれて、わたしはまたメロのそばに行き、頭を撫で、蟻を追い払い、でももう暗くって、でもメロに蟻がたかるなんて許せることじゃなくて、でも蟻も見えないほどもう暗くって。

回収業者がメロを箱に入れ、手を合わせ念仏のようなものを唱えている。わたしも倣った。部屋に帰るとしばらくはぼんやりして、その後に「わっ」と泣いた。涙は止まることなく、けれど

「諦めるっていうこと、わたしなぜか得意じゃなかった。けれど諦めなくちゃならないこともあって、しょうがない、しょうがない、しょうがない、そう思うのも必要なんだね」と言うと、

そうなんです。順ちゃんは涙をぽろぽろこぼしながら何度もうなづいて、「そう、しょうがないんだ」と言って笑っていた。